ニューヨークのグルメ・デリ

元来「デリ」という呼び名は、ドイツ語の調理済み食品という意味にあたるデリカテッセンに端を発する。 だがニューヨークで一般的に言う「デリ」とは、日本でいうコンビニエンス・ストアーに相当する、八百屋、果物屋、食料品店、雑貨屋、花屋などを兼ね備えた、比較的小規模なマーケットの総称である。 ニューヨーク中至る所に存在し、とりわけ何でも揃っており、その殆どが24時間営業と、目まぐるしく忙しいニューヨーカーの誰もが利用する非常に便利な存在である。

そういった町のコンビニエンス・ストアー風デリとはおよそ程遠いところにある、 本来のデリカテッセンの意を忠実に実践してきた「グルメ・デリ」が、現在ニューヨークで脚光をあびている。 ニューヨークは移民の国アメリカを象徴する都市だけあり、世界中からありとあらゆる「食」が集められ、その店内を見てまわるだけですっかりグローバル気分になってしまう。 味にしろ、質、量、パッケージに至るまで、世界の一流が集まるニューヨークならではのものだ。

ニューヨークのグルメ・デリの人気の秘密は、従来のデリが持つコンビニエンス・ストアー的な手軽さと、一流レストランにもひけをとらない高級さ、美味しさが巧くミックスされている点にある。 電子レンジさえあれば、高いチップと正装なしで、一流レストランの味が温かいまま気軽に自宅のテーブルで楽しめる。 時間のないニューヨーカー、多くの女性が働きにでるニューヨークでは、まさにうってつけである。 また、料理が好きな人にとっても、ハイグレードで物珍しい食品や世界各国の多彩な食材が手に入るグルメ・デリは、実に興味の尽きない場所である。 それは、見て回るだけですら十分良い勉強になるため、食料品業者、流通関係者等の視察が後をたたない。 美味しいもの、変わったものが置いてあるという点では、日本が誇るコンビニエンス・ストアーや、デパートの地下食品街と似ているようだが、実は決定的に異なる点が一つだけある。 それは、日本の場合、大抵の商品は画一的な品揃えで、有名ブランドやレストランの出店で占められているのに対し、ニューヨークのグルメ・デリはどこも個性的なオリジナルテイストで勝負しているという点である。 その多くは支店すら持たず、そこ一軒だけの自家製品を提供しているのである。

グリニッジ ビレッジにある「Balducci�s」は、今年で創業82年の伝統ある老舗。 この店が、今日のニューヨーク・グルメ・デリの繁栄の基礎を築いたと言っても過言ではない。 商品はイタリア系で、毎日70種類近くの惣菜メニューがウィンドーを賑わす。 この店の自慢の商品はパスタである。 イカスミなど自家製の生パスタが一パック$2.49から$4.49の安さで、乾燥物、冷凍物も$1.95より販売されている。 またパスタの種類に合わせて選ぶ自家製パスタソースもイタリアの味を満喫させるに足る人気の商品である。 イタリアのもの以外でも、珍しいものを数多く見つけることができる。 例えば、本物の霜降りの神戸牛が手に入るのはニューヨークといえどもこの店だけである。

ソーホーの倉庫を再利用した「Dean & Deluca」は、最近のグルメ志向に照合するイタリアの高級食材店として有名である。 天井が二階分ほどある広い店内に所狭しと置かれているカラフルな果物や野菜類は、あたかもディスプレイされた芸術品さながらである。 Food Museum(食の博物館)とも称されるほど、この店の厳選された食材や扱う惣菜の品目は多彩に渡っている。 料理の方もロブスターやカニ、キャビア、フォアグラ、生ハムなどの高級素材が贅沢に用いられ、一流レストランのコースディナー同様の豪華な内容が味わえる。

ソーホーにある「Grassroos」は、オーガニック・フードを中心としたベジタリアンに信頼のあるナチュラル・フードの店である。 ビタミン剤から野菜、お菓子、飲み物、さらに量り売りの惣菜、インスタント・コーヒーまでもがナチュラル素材である。 また1パウンド $4.95のサラダバーもオーガニックで、ヘルシーフードとして注目されている昆布、ひじき、豆腐、味噌などもアメリカ人の口に合うよう調理されている。

ダウンタウンの雄がBalducci�sなら、アップタウンの雄は間違いなく「Zaber�s」であろう。 まず入ってすぐが、ニューヨーク随一の規模を誇るチーズコーナーである。 その数はまさに600種類を数え、フランスやスイスの他に、南米、東欧、中東 ・・・・ とまさに世界中のチーズが集められている。 世界の味といえば、サーモン抜きではこの店は語れない。 ウインドーには香ばしそうな色をしたカラフルな薫製がずらりと並び、その後ろでは注文に応じて切り売りされるスモークサーモンの前に列ができている。 また、お茶の量り売りがあるのもこの店だけである。 アール・グレイなどの英国茶に加えて、ウーロン茶、ジャスミン茶などの中国茶、日本の高級番茶までも取り揃え、量り売りしてくれる。 さらに、一週間に一万パウンドが売り上げられるという世界各国のコーヒー豆は、店の奥にある自社工場で、ローストから包装までのすべての工程を経て売り出される。

他にも、一日に使用する小麦粉の量が14トンにも及ぶという、Ficelleというパンが売り物の 「E..T」や、ニューヨークのグルメ・デリでも最大規模を誇る The Vinegar Factory」、全商品にカロリー、蛋白質、脂肪などの数字表示がされている有機食材店 Blanche�s Organic」、着色料や保存料が無使用のキャビアなどの高級食材を扱う「Petrossian Paris」など等、ニューヨークには個性ぞろいの名店が数知れず存在する。

こういう店があるからニューヨーカーの舌は肥えたのか、それともニューヨーカーの舌が肥えているからこういった店が受けたのか。 グルメ・デリは、今やニューヨーカーの食文化に欠かせない存在となっているのだ。

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多少古いですが、今までに新聞に
掲載した記事やBaruchでの論文
などをアトランダムに載せました、
興味のある方はご一読下さい。 
今読むと、ビジネススタイルの変貌
の速さに驚愕を覚えます。
著者の日記